切なさに似て…
思わず、信浩の二の腕をがっしり掴んでしまっていることは、完璧に無意識で。

何度も角度を変えて重なる口づけ、絡み合う舌に、意識だけがどこかに連れ去られてしまったみたい。


その吹っ飛ばされた意識が再び私の中へと戻されたのは、モゾッと服の裾から入り込んだ何かのせい。


「…ちょっ、待った!」

両肩を力いっぱい押し上げ、開いた服の隙間を必死で隠し、侵入してきたものを振り払う。


「どさくさに紛れて、これは何よ?」

力を入れ掴み取り、それを布団の中で揺さぶる。


「何って、手じゃん。俺の」

しれっとした態度で言われなくてもわかっている。


「そういうことじゃなくって、何で手を入れたか聞いてんのっ…」

私の怒り口調に信浩は体制を変えた。頬を手の平で押さえ肩肘を付き私の隣に横になる。


その時、リモコンのスイッチが押されてしまったのか、ピッと蛍光灯が点き、再び部屋中に光が蘇る。

その途端、つい顔が歪み目を細めてしまう。


そんな顰めた顔に近づく影には気づかず、チュッ。と、音を立てキスを落とされた。

直ぐさま反応できないでいた私は、目を薄く開いたまま腕をばたつかせる。


「何でって。聞くか普通?…んなの決まってんだろ?」

狭い視界の奥で信浩がニヤッと悪戯っぽく、笑みを浮かべているように見えた。


「…聞きたい?」

と、息を吹き掛けるかのように耳のすぐ近くに届く声に、身体中が痺れる感覚。
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