切なさに似て…
「あれっ、…鍵。確かこの辺に…。4tダンプの鍵見ませんでした?」

ひょこっと顔を出した結城さんに、天の助けと言わんばかりに私は立ち上がって、カウンターまで歩み寄る。

「あ、これじゃないですか?」

そう声をかけた私の台詞は見え透いていた。

「これこれっ、最近忘れっぽくて。ありがとう」

少年のような笑顔を作り。


「どうかしたんですか?外まで聞こえてましたよ?」

そう付けたし、事務所の奥に視線を移す結城くんも明らかに白々しい。

その言葉を聞いた澤田さんが、顔を強張らせたのち。

「何でもないわ。あとはよろしくね」

そそくさと踵を返し、隣の休憩所へと引っ込んで行った。


完全に消えたお局様の姿に、ようやく安堵の息を吐き出した。

「はぁ、助かった。ありがと」

「毎日よくやるなぁ…」

半ば呆れた様子で、結城さんは苦笑いを浮かべた。

「本人は気にしてないみたい」

そう言い、ちらっと振り返る。


私と結城さんの視線には気づかずに、当の本人は手鏡でヘアスタイルを直していた。

「ははっ。彼女くらいだ、あの澤田さんに逆らえるの」

「ああ見えて…、度胸座ってるわ」

「おっと、戻らなきゃ」

「はいはい」

片手を挙げる結城さんに、私もひらひらと小さく手首を振る。


結城さんは最後に、“今日、待ってるから”そう言い残し外に飛び出して行った。
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