切なさに似て…
まだ朝は始まったばかりというのに、へたばり出した体を向き直し自分の椅子へと腰を預ける。


手鏡から携帯に持ち替えた白崎さんが私を見上げた。

「何で澤田さんはあんなに怒りっぽいんですかねー?」

「うーん…」

難しそうに腕を組んでみた。


…その人の話しを聞いてる態度じゃないからじゃない?

これはお局様が、口がすっぱくなる程言い聞かせて来た言葉。


「これくらいいいじゃないですかー。ファッションですよー?お洒落したことないんですかねー?あの人いくつなんですかねー?」

「確か…、31歳だったかな?」

「えーっ!!そんな年いってんですかー?しかも結婚もまだでー。有り得なーい」


19歳からしたら、21の私はどう見えているのか聞くのが怖い。私もそうやって言われる年齢に到達するんだろうなぁ…。


「それより、あたし辞めようかと思ってて。こんな怒られてばかりでつまんなーい」

彼女の予期せぬ一言に、伝票入力していた指の動きが止まる。

「辞めてどうするの?」

「ショップ店員とか?お洒落好きだし。あとはー…、今の彼氏と結婚とか?澤田さんみたいにはなりたくないしー。まだ1年ですけど、あたしにはこの職場向いてないと思いませーん?」

左横に目をやると、毛先を弄りながらあたかもつまらなさそうにしている。


…やっぱり向き不向きって、関係あるのかなぁ。


「立花さんはよく4年もやってられますね?結婚しないんですかー?」


たったの4年なのに。長いとこ勤めてますね、どうするんですか?って言われているみたい。
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