切なさに似て…
毎回、彼女と会う時はこの店を利用しているから、メニューの内容は丸暗記してしまった。

新メニューには目も暮れずにいつも頼むのは、メインはハンバーグドリアに、デザートはフォンダンショコラ。コーヒーはアメリカンが私のお決まりだった。


…ピンポン。機械音が遠くで鳴ったのを確認して、ドリンクを取りに私は席を立ち、手に取ったカップを注入口に置き、ボタンを押した。


…今日は何時間かな。

あぁ、また愚痴とか聞かされるのかな…。前は、4時間いたっけ?

ちらっと席に目を向けると、嬉しそうに携帯を弄る彼女の姿を捕らえた。

相手は彼氏だろうな…。

はぁーっ…、面倒臭っ。


真っ白なコーヒーカップに、湯気を発しながら熱いエスプレッソが注がれる間、私の気分はすっかり落ちてしまっていた。


店内に設置された大きな業務用のヒーターの前を横切ると、ふあっと首元まである緩めのパーマヘアが舞う。


…はぁ。

ささっと手梳で、乱れた赤みがかったカシスブラウンの髪を整えた。


さっきから、溜め息ばかりの私。立花 柚果(タチバナ ユズカ)。

仕事は各地に営業所を構える、建設資材や機械のレンタル会社の経理事務、この春で4年目。今年の7月で22歳になる。

周りの同年代の女の子達は、若い内に結婚したいらしいんだけど、私にはその願望が見出だせないでいる。

私にはきっと、いや…。絶対、みんなには理解しがたいものがある。
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