切なさに似て…
「…結婚するような相手いないから」

そう言い捨て、パソコンの画面に目を移す。


結婚、…最近ほんと耳にすることが多い。そういう年齢なわけ?


「またまたー。知ってますよー、カッコイイ彼氏いるの。朝、車で送って貰ってるじゃないですかー」

投げかけられた台詞に、眉毛がぴくぴくと蠢いた。


「いいですよねー、立花さんの彼氏。優しそうだしカッコイイし。あたしの彼氏なんて、ガタイだけでっかくて」

…信浩のことだ。


「あれは…」

彼氏じゃなく友達。


そう言おうとした言葉を飲み込んだ。

いくら私たちの関係を説明したってわかるわけがない。


『またまた、隠すことないじゃないですかー』と、そう言われて終わりなような気がした。


「高校からですかー?」

「あぁ…、うん」

「あんな爽やかだと自慢ですよー」

「ははっ…、そうかな…?」

信浩って…、爽やかだったっけ?

頭の隅にちらつく信浩の顔を思い出しながら。


「あの車ってアウディですよね?あたしの彼氏なんて軽自動車ですよー、羨ましーいっ」

「私免許ないから、車のこと良くわかんないんだよね」


このまま、信浩が彼氏ってことにしておいた方がいいのかも知れない。


[社内恋愛禁止]

天井の梁のぎりぎり高い場所に画鋲で貼られたその社訓を見上げ、黙っておこう。そう決め込んだ。
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