切なさに似て…
「ここって、際立ってカッコイイ男っていないですよねー」

彼女は机の上に肘をつき両手に顎を乗せた。


「そう?そういうの気にしたことないからわかんない」

と、聞き流すみたいに答える。


私のキーボードを打つ音と、遠くで聞こえる機械倉庫からの笑い声。


「…あっ!!」

なんて思い出したかのように、いきなり大きな声を出した彼女を見やる。


「いましたよー!機械課の結城さん!!他に比べて若いし、あの黒髪とかそそられません!?」

唇の端を緩め、なんだか嬉しそうに目を輝かせている。


「結城さんてどう思います?」

そう聞かれ、私のこめかみ辺りがピクリとひくつく。


「どうって…、別に。まぁ、普通じゃない?」

「よぉーし。キープしとこうかなー」

黄色い声で言い、腰を使って椅子を左右に振る。


「キープ?」

「今の彼氏と別れた時のためにですよー」

「あぁ、なるほどね」

「チーフだし、それなりに給料貰ってそうだしー。彼氏と別れよっかなー」

「そういうもん?」

「そうですよー!!やっぱり男は経済力ですってー」

19歳の白崎さんの口から経済力なんて言葉を耳にして、私はキーボードから手を離し目をひんむかせた。
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