切なさに似て…
そして…。

コーヒーカップを受け皿に乗せ、席に戻ると。

襟足までの短く明るめの髪を揺らし、楽しげに頬を紅色に染め、携帯電話を耳に当て電話をしている“友達”のさっちゃん。

名前は幸絵(サチエ)。

知っていることと言えば…。街中でエステティシャンやってるってことと。彼女には付き合って2年の6歳上の彼氏がいる。

あと、私と同じ年ってことくらい。


注文した料理が運ばれ、お腹も減っていた私たちは、美味しいと言いながら、あっという間に平らげた。

テーブルの隅に備え付けられたナプキンに手を伸ばした時。

「…これさ、ハンドクリームなんだけど。凄いいいらしいんだよね。今日マネージャーに進められて欲しくもないのに買っちゃったんだけど、6千円もすんだよ!高くない!?」

さっちゃんは鞄から小さな小瓶を取り出し、口を尖らせた。

口元を拭ってコーヒーを啜り、対した容量もなさそうな手の平サイズの瓶に目をやる。


私の視線がそれに移ったのを見て、さっちゃんは話しを続ける。

「また買わされちゃったよ。給料出たらいつもなんだよね。天然素材で有害物質が配合されてないから体にはいいからってさ。うちはノルマとかないのに売上が伸びないからってさ。ほんとムカつくかないっ!?」

何かと不満の多いさっちゃんは、こうして一気にまくし立てるのはお約束。

「へぇー…」

興味なさそうな私の返事も、お約束だった。
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