切なさに似て…
ソファーに座る私の前に、腰にバスタオルを巻いただけの一弥は膝立ちし顔を近付ける。

「どうかした?」

頭上に振り落とされた声に驚き顔を上げる。

「…え?」

ポタポタと首筋を伝う冷たい雫に、我に返る。


「怖い顔してる」

そう笑い飛ばし、私の肩にかけられたスカルプの香りが染み付いたバスタオルを掴み、濡れた髪を拭き上げた。


お風呂から出た私は、用意されたヒラヒラレースがたっぷり施されたのシースルーのキャミワンピを身に纏う。

紫色をした着衣は肌が透け、着ても着なくても同じで、何の役割も果たせていない。


いつものスウェット姿と違い、このピラピラしたワンピに袖を通しただけで、艶かしい姿態に気が狂いそうになる。


バサバサと揺らされる頭。タオルの間から覗かせる分厚い胸板が恋しくて。

その手の動きを止めさせる術は一つだけ。

「もういい…」

タオルを手から奪うと、同じ様に濡れた一弥の頭に腕を回して唇を奪う。


ほんの僅かに離れた口を開く。

「もう一回、して…」

目を大きく見開いた一弥の驚いた顔が、薄目を開けた私の目から見え隠れする。


一瞬、目許を綻ばせたかとおもいきや、眉間に皺を寄せ私の唇に吸い付いた。

「…っ…。誘ったのはっ…、柚だからっ…」

剥ぎ取られたキャミワンピ。

露になった肌に貪りつき、「覚悟しなよ」その言葉に、激しさを増す刺激。


「愛してる…」

呻き声にも似た重たくのしかかる言葉。

「もっと…っ」

おねだりをすれば、それに応えてくれる。


空腹だってことさえ忘れてしまえるくらい。

ベッドへと移動し組み敷かれた。このあとの情事は火照った体を求め合うのみ。


その香りに、私は今日も惑わされる。
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