切なさに似て…
こうしてストーブの前でぼーっとしていれば、濡れていた髪は根本まで完全に乾き、冷え症の体も温かくなった。


信浩は寝ちゃったし、私も寝よ…。

そう思い空いているベッドに乗り上げ、長く垂れた電気の紐を引っ張った。


掛け布団に足を入れ、首まで覆った時。

ふぁっと、ストレートティーのような香りが鼻を掠めた。


ヴィヴィアンのレットイットロック。シャワー後しかつけない、信浩が愛用する香水の匂い。

あぁ…、そっか。移り香か…。


誕生日の香水…。

何がいいかなぁ。

っていうか、お気に入りのヴィヴィアン以外つける気ないくせに。

何でまた、香水なんて言ったんだろう。

ヴィヴィアンなら男も女もあんまり関係ないかぁ…。


目を閉じ、その癒される香りに鼻をひくつかせる。


何で、この香りには惑わされなかったんだろう…。
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