切なさに似て…
3杯目のアメリカンを注ぎに行き、私が席に戻るなりさっちゃんはまた興奮気味に声を張る。


「この間も隠れて新しいゲーム買ったんだよねっ!ウチに内緒でっ!!そんな高くないよ、3千円くらいだからとかって、値段じゃないのにっ」

余程高ぶっているのか、身振り手振りで話すさっちゃんに目線を預け、カップに口を付ける。


「…じゃ、何に怒ってんの?」

「隠してたってことに怒ってんだよ。だって秘密なんだよ?付き合ってるのに」

「…付き合ってても、秘密にしておきたいことなんてたくさんあるよ?」

「ウチは全部話すよっ!?隠し事なんてないよ」

「うん、さっちゃんはね。あのさ、人には言いたくないことだって一つや二つあるよ。見られたくない物だってあるよ」

「それは違うと思うっ。付き合ってるんだから何でも話すのが当たり前だよ。そうでしょ!?」

「まぁ…、そうだね…」

そうかな?なんて疑問を、やはり頭で投げかけたけれど。

こんなこといつまでも繰り広げていたって、平行線を辿り続けるだけで、結局、最終的に折れるのは私だった。


そうして…、デザートに手を出した頃には、来店からとっくに3時間は過ぎていた。

私の中ではとっくに終わらせた会話が、未ださっちゃんの中では続いていたらしい。

「ウチが怒ってるのは内緒で買ったことじゃなくて、それを内緒にしていたことにムカついてんだよ。
だって、ウチに内緒ってことは2人の信頼関係はないしょ。すぐ隠し事するしさ、何で買ったことすぐ言わないか問いただしたら。
いや、これは前に貰った物だとかふざけんなって。自分で買ったって言ったくせにさ。
だから、謝っても許さない。ほんと泣きたいよっ」


あれも駄目これも駄目、私がさっちゃんの彼氏なら、窮屈で間違いなく逃げ出している。
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