切なさに似て…
私にも彼氏がいたように、信浩にも彼女がいた。

私が彼氏と別れると、信浩も別れる。

私に彼氏が出来ると、信浩にも彼女が出来る。


『あんたたちまた別れたの?いつも、いつも被りすぎだから!』

『裏取引でもしてんじゃねーの?』

『あんたら似た者同士なんだねーっ』

仲が良かった麻矢と治はそんな私たちを見て、よく馬鹿にしたように笑いこけていた。


“似た者同士”そう言われるのが密かに嬉しかった。


『お前ら、めんどくせーから付き合っちゃえよ!』

その言葉が嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったくて。

ちらっと信浩を見ると、目が合った。


『俺と柚果が!?バーカッ、んなこと、あるわけねーし。な?』

そう笑い飛ばして私を見下ろした。


私は、頷くしか出来なかった。



…あるがわけない。

…そんなわけない。


―それが高校3年の夏だった。


自分の気持ちに蓋をしたのはこれが最初じゃない。

高校1年の、あの冬からずっと。

蓋に降り積もった雪は重たくて、1人じゃ開けられない。


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