平安物語=短編集=【完】
御帳台に入った時、嗅ぎ慣れない匂いにハッとしました。
――これは…中将様のお召し物に薫きしめてあった香り………
余所へ来たような落ち着かない心地がして、私の薫き物の香がする掛け物を頭まで引き被りました。
何だか泣きたい気分で横になっていると、
「おや、待っていてくださらなかったのですね。
お見送りもしてくださらなかったのに。
薄情なお方だ。」
と言いながら、人が入って来ました。