平安物語=短編集=【完】
――中将様…?
目を覚ますと、中将様のお姿が見当たりません。
「お目覚めですか、姫様?」
御帳台の外から、大輔が声をかけてきました。
「ええ……中将様はどちらへ?」
「夜が明ける前にお帰りになりました。
姫様がよくお休みなので、起こさないようにと。」
「そう…。」
何だか寂しいのは、腕の温もりに安心しきっていたせいでしょうか。
あの腕の名残である、中将様の移り香の中にしばらく横になっていました。