平安物語=短編集=【完】
暫く話した後まだ空が白み始めてもいないのに、帰り支度を始められます。
「…随分お早いお帰りですのね。」
何となく不愉快で、ぶすっと呟くと、御髪を整えていらした手を止めて振り返り、
「そんな可愛い事を仰っていると、襲いますよ。」
とにっこりなさいます。
仰る意味を解した途端、みるみる顔が赤くなり、
「な…な…何て事を仰るのでしょう、この方は。」
と、再び掛け物を引き被ってうつぶせました。
中将様は声を上げてお笑いになって、支度が終わってから、無理矢理私の掛け物を剥ぎ取ります。
「寂しいですか?」
嬉しそうにそう仰るので、
「早く帰ってください。」
と言うと、「全く素直じゃない。」とお笑いになって、軽く唇を落として御帳台を出て行かれました。