平安物語=短編集=【完】
後を追うように私も御帳台を出ると、気付いた中将様が、部屋を出かかっていらしたのを引き返していらっしゃいました。
「今日は見送ってくださるのですね…」
そう仰って、苦しい程に抱き締められます。
「ああ、このまま連れて帰りたい…」と呟かれて、優しく、でも情熱的に口づけられました。
「雨が降ろうが槍が降ろうが、必ず今夜も来ますからね。」
コクリと頷くと、「ううう」と唸ってまた抱き締めます。
その時、「もう夜が明けてしまいます。」と声がかけられ、大きく溜め息をつかれた後もう一度軽く口づけて、振り返りながらお帰りになりました。