平安物語=短編集=【完】
――数日後
「はあぁ……」
「どうなさいました?姫様。
毎晩毎晩、夫に通って頂かれている女性らしくもない。」
私の大きな溜め息に、大輔がからかってきました。
「…これを見て。
最後の方。」
そう言って、中将様からの文を渡します。
「ええと…『あなたは今も、私が居なくて寂しいと泣いていらっしゃいますか?
私もあなたがいないと、始終あなたのことばかりを想って政務も手に着かず』……」
「違うっ、もっと後よ。
最後の二・三文!」
恥ずかしい所を読み上げられ真っ赤になって抗議すると、大輔はクスクスと笑います。
「あら、すみません。
『一日でもあなたに逢わないではいられません。
しかし、宮中の宿直や付き合いなどもありますから、数日はお訪ね出来ないと思うのです。
どうか、邪推などなさらず私の誠意をご理解くださいますように。』
まぁ…。」
俄かに大輔の表情が曇ります。
「これが世に言う、夜離れ(ヨガレ)というものの始まりかしら?」
私が無理に笑顔を作って冗談めかして言うと、
「まさか、浮気ではないでしょう。
中将様の姫様への入れ込みようは、傍目にも明らかです。
本当にお付き合いかもしれません。
もし他の女性のもとへ行かれるにしても…中将様が本当に愛しているのは、姫様ですわ。」