平安物語=短編集=【完】
乳母が様子を見に来ましたが、掛け物を引き被って受け流しました。
――ここには居られない。
あの男が、まさかあんな風に思っていたなんて…
もったいないほどの義母上がいながら、何ということなの。
中将様も、きっと助けてはくださらない…。
やはり出家するしかないわ。
尼になってしまえば、あの男だって手出しはできない。
でも…
髪を切り落として尼になってしまったら、義母上や大輔がどんなに悲しむことだろう。
それに……もう、中将様にも会えなくなる…。
以前は出家の気持ちばかりが強かったのに、何て不甲斐ないことだろう…。