平安物語=短編集=【完】



――やっぱり、今の私は出家出来そうにないわね。


沈みきっていた心は、こんな些細な事で少なからず明るくなりました。

この気分をこのまま逃がしたくはないと御帳台からにじり出てみると、大輔が近くに控えています。


「姫様!

御気分は、もうよろしいのですか?」

心配そうな大輔に、

「ええ、ありがとう。
何だか、琴が弾きたくなって。」

と微笑みかけました。


「そうですか!

すぐに用意いたしますね。

琴の琴でよろしゅうございますか?」

琴の琴は奏法が難しく、今はもうあまり弾き手もいないのですが、義母上は宮家伝来の奏法を習得していらして、継子である私にも直々に教えてくださったのでした。


「いえ、今日は和琴(ワゴン)が良いわ。」

まだ琴の琴が習得出来ず、嫌気がさしていた頃に和琴をよく弾いていました。

父上はよく、「あなたの和琴は、亡くなった母上によく似ている。」と仰っていました。



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