平安物語=短編集=【完】
「姫様!?」
「大輔っ!」
「春雨の君!?」
三人の声が重なりました。
――えっ
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは、何と中将様なのです。
「えっ、あっ、中将様!?」
「……誰と間違えたのです?」
大輔は、そろそろと退出しました。
「え、いえだって、あなた様は、今夜は宴のはず……」
「…少将に会いましてね。」
ボソッと呟く中将様に、血の気が引く心地がしました。
何か言おうにも、口の中がカラカラで言葉が出ません。
中将様は、そんな私をじっと観察なさった後、やおら微笑みを見せて、
「少将に会って、あなたに逢いたくて仕方なくなってしまいました。」
と仰いました。