平安物語=短編集=【完】
「そ、うですか。」
意味深な微笑みに、なおもおどおどしていると、
「そんな様子では、浮気をしたと思われてしまいますよ?」
と言われました。
「そっそんな!!」
泣き出さんばかりに否定しようとすると、中将様は明るくお笑いになって私を抱き締めました。
「冗談です。
大体の事の次第は分かっているつもりですよ。
あなたは手紙の返事をくださらないし、少将にあなたの事を訊くと妙にうろたえているし、心配になって来てしまいました。
気分が悪いと仮病を使って逃げ出して来たから、こっそりしていたのです。
少将があなたに只ならぬ想いを抱いていたのは知っていました。
あの、結婚の夜ですよ。
あなたの姿を見た少将の、あの表情と言ったら。
それ以来、さり気なく気をつけていたのです。」