平安物語=短編集=【完】



ぐったりしたまま中将様の胸に抱かれていると、中将様は私の長い髪を弄んでいらっしゃいました。


「髪を切り落とさなくて良かった…」

思わずそう呟くと、中将様は髪に口づけました。

「こんな美しい髪を、切り落とそうとしたのですか?

これからは私が誠心誠意守りますから…そんな事はもう考えないでくださいね。」


何だかくすぐったくて、さらにすり寄ってくっつくと、ぎゅーっと抱き締められました。


「春雨の君…、お名前を教えてくださいますか?」

名前を教えるということは、本当にその人のものになるということですが、私に迷いはありませんでした。


「清子(キヨコ)と申します。」

「清子…」

その後、まるで唇に馴染ませるかのように何度も私の名前を呟かれました。

「私は、義道(ヨシミチ)と申します。」

「義道さま…」


ふふと笑うと、また何度も何度も口づけました。



< 208 / 757 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop