平安物語=短編集=【完】
ぐったりしたまま中将様の胸に抱かれていると、中将様は私の長い髪を弄んでいらっしゃいました。
「髪を切り落とさなくて良かった…」
思わずそう呟くと、中将様は髪に口づけました。
「こんな美しい髪を、切り落とそうとしたのですか?
これからは私が誠心誠意守りますから…そんな事はもう考えないでくださいね。」
何だかくすぐったくて、さらにすり寄ってくっつくと、ぎゅーっと抱き締められました。
「春雨の君…、お名前を教えてくださいますか?」
名前を教えるということは、本当にその人のものになるということですが、私に迷いはありませんでした。
「清子(キヨコ)と申します。」
「清子…」
その後、まるで唇に馴染ませるかのように何度も私の名前を呟かれました。
「私は、義道(ヨシミチ)と申します。」
「義道さま…」
ふふと笑うと、また何度も何度も口づけました。