平安物語=短編集=【完】
藤壺の部屋に着くと、案の定驚いたようで、少しだけ目を見開いた。
尚仁を隣に座らせ、「ほら、ご挨拶を。」とを促すと、
「はじめまして、中宮さま。
お目にかかれてうれしゅうございます。」
と、大変可愛らしく挨拶できた。
さすがの藤壺も、その可愛らしさに表情が和らぎ、
「初めまして、東宮様。
私こそ光栄に存じます。
この度はご愁傷様でございました。」
と、いかにも優しい声で答えた。
こんな声が出せたのかと、こっちが驚かされた。
以前宴で見かけて以来、美しい藤壺を慕っていた尚仁は可愛らしく頬を染めた。