平安物語=短編集=【完】
藤壺が御息所の死に触れたので、すぐさま
「そのことに関して…宮。」
と食いつくと、
「はい。」
きょとんとした顔で、尚仁が私を見上げる。
…なるほど、尚仁も「宮」であったな。
藤壺の顔を見ると藤壺も驚いたような表情をしているので、思わず吹き出すように笑ってしまった。
しかし、私の笑いはすぐに止まった。
初めて見た藤壺の笑顔の美しさに、目を見張ったのだ。
藤壺も気まずく思ったのか顔を伏せてしまう。
二人きりであったら、近寄り肩を抱いて、もう一度笑わせようとしただろう。
しかしそこには尚仁がいるので、努めて早なる心臓を落ち着け、何気ない声を繕って
「いやあ、これは私の落ち度だった。
今は中宮を呼んだつもりだったのだよ。」
と、笑いながら尚仁に言った。