平安物語=短編集=【完】



藤壺が御息所の死に触れたので、すぐさま

「そのことに関して…宮。」

と食いつくと、

「はい。」

きょとんとした顔で、尚仁が私を見上げる。

…なるほど、尚仁も「宮」であったな。


藤壺の顔を見ると藤壺も驚いたような表情をしているので、思わず吹き出すように笑ってしまった。


しかし、私の笑いはすぐに止まった。

初めて見た藤壺の笑顔の美しさに、目を見張ったのだ。

藤壺も気まずく思ったのか顔を伏せてしまう。

二人きりであったら、近寄り肩を抱いて、もう一度笑わせようとしただろう。

しかしそこには尚仁がいるので、努めて早なる心臓を落ち着け、何気ない声を繕って

「いやあ、これは私の落ち度だった。

今は中宮を呼んだつもりだったのだよ。」

と、笑いながら尚仁に言った。



< 293 / 757 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop