平安物語=短編集=【完】



更衣似の女を下ろして、優しく髪を撫でる。


更衣…更衣が、帰って来たのだろうか。

満月を恐れていた彼女は、一旦満月に帰ってしまったけれど、また帰って来たのかもしれない。

…そうだ、私は更衣の亡骸を見ていないではないか。

月に昇る時、地上での記憶を消す薬を飲まされると言うが……だから、今こうして記憶を失ってしまっているのか?


そんなことを考えながら、わなわなと震える女を愛を込めて見つめた。



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