平安物語=短編集=【完】
すると突然、藤壺がくるりとこちらを向いた。
しかもその顔には、初めて見る満面の笑顔…
唖然としていると、
「大君は可愛ゆうございましたでしょう?
私の可愛い姪の君なのです。
突然入内相手が変わり、さぞや戸惑っていることでしょう。
どうか、大切にしてあげてくださいませ。」
と言って、再び反対側を向いてしまった。
私は、藤壺の笑顔の美しさ、そして悲しさに胸を打たれて言葉が出なかった。
藤壺、お前は素晴らしい女だよ。
あの更衣と先に出会っていなかったら、私はお前が愛しくて仕方なかったかもしれない。
事実私は、お前を失いたくない。
勝手と分かっていても、隣に居て欲しい。
決して気まずい思いはさせないから…
そんな心からの叫びは、喉の辺りでこらえてしまった。