平安物語=短編集=【完】
それ以後も、登華殿女御を格別に寵愛した。
藤壺の身を立てながら、であるが…
身分不相応に愛して、また喪ってはたまらない。
当の女御は、正直に言えば実に小生意気で可愛げの無い様子であった。
可愛げが無いのは藤壺も一緒だが、藤壺には控えめでゆかしい風情がある。
しかし女御は、我こそは左大臣の大君という自負に満ちていた。
それにも関わらず女御を寵愛したのは、他でもない、更衣の面影を見ることができたから。
更衣に生き写しの和仁は、男同士ということである程度の距離があるが、この女御なら側において、更には抱き締めて口づけることができる。
歯に衣着せぬ物言いをすれば…
『更衣の形代(カタシロ)』。
それだけだった。