平安物語=短編集=【完】
――…登香殿女御の入内から更に数ヶ月経った頃、宮中で催し事があった。
例によって、妃達全員を招待した。
藤壺が私の所に来て一緒に会場へ向かうのだが、例年になく煌びやかで雅な装いの藤壺を見て、さすがに少しは登華殿の存在を気にしているのだろうか…と愛しく思いながら歩んだ。
会場に着くと、藤壺の足が止まった。
「宮?」
どうしたのだろうかと思い声をかけると、はっと我に返ったような表情をした。
いつにない様子を可愛く思い、微笑んで手を差し伸べると、恥ずかしそうにしながらも手を握った。
もちろん、玉座のすぐ隣に藤壺の席があるのだが、玉座を挟んで反対側には登華殿の席をしつらえさせた。
折を見て話せたら…という思惑があってのことだ。
宴が始まる前も始まってからも、いつ声をかけようかとばかり思われる。
藤壺や女房達には分からないようにさりげなく話し掛けるが、藤壺はつれない返事しかしない。
いつも以上の冷淡さだなと思っていると、藤壺つきの若い女房が殊更に華やかな雰囲気を醸し出して、その場の空気をごまかしていた。