平安物語=短編集=【完】
「もう見知っていらっしゃるとは思うけれど、登香殿女御です。」
と藤壺に紹介すると、今更ながらこちらを向いた。
女御が礼儀正しく
「お久しゅう存じます。」
と言うのをじっと見つめて、美しすぎる無表情で
「ごきげんよう。」
と言った。
女御はそんな藤壺に怯んだようだったが、藤壺は決して睨んだししている訳ではなく、ただただいつも通りの様子なのだ。
むしろ、ここまでいつも通りで冷静なのを可笑しく感じた。
ここでやおら笑みなど見せたなら、それなりに気持ちも乱れもしているのだろうかと思うが…
それからはずっと、几帳を取り払った状態で見物した。
私は双方に話し掛けるが、藤壺は遠慮しているのか普段より更に並一通りの返事しかせず、女御も緊張しきってしまって固くなりっぱなしだった。
しかし私は、本当の両手に花の状態にひどく満足だった。