平安物語=短編集=【完】



え…

信じられないことを聞いて、思わず藤壺を凝視してしまった。

すると、恥ずかしそうに袖で顔を隠してしまう。

その腕を掴み「宮。」と呼ぶと、恐る恐るといった感じで私を見た。


「今仰ったことは、本当ですか…?」

震えてしまいそうな声を絞り出すと、しばらくの沈黙の後に、俯いて頷いた。


――ああ、何ということだ


苦しくて、ぎゅっと抱き締める。

「院…?」

「私は…あなたには、嫌われきっているものだと思っていました。

心ならずも親の命令で私に入内したことを恨んでいるのだろうと…。

まさかあなたが。

そうと分かっていたら…。

私は今まで、あなたにさぞかし辛い思いをさせてきたのでしょうね。

本当に…。」


申し訳なさに、体が震える。

藤壺の涙で私の衣服が濡れた。



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