平安物語=短編集=【完】
思い乱れて、どうしようもなかった。
私は…他の妃と共寝しても心は満たされなかったが、登華殿女御はもちろん藤壺との共寝も、身も心も満たされるものだった。
たまに表情が変わるのが、嬉しくて…
更衣より先に出逢っていたのなら、私達の仲はまた違うものだったかもしれない…
その時、藤壺がそっと私の背に腕を回した。
――過去をあれこれ嘆いても仕方ない、これから…大切にしたい。
藤壺の髪を、今までにないくらい愛を込めて撫でながら思った。