平安物語=短編集=【完】



そして、姫の誕生から一年が経とうとしていた頃でした。


ある夜お召しを受けて参りますと、東宮様が

「実は、弘徽殿女御に姫を見せてあげたいのですよ。」

と、笑顔で仰いました。

私は一緒唖然と致しましたが、すぐに笑顔を浮かべて

「女御さまの御迷惑にならないよう東宮様がきちんと見ていてくださるのなら、何の異論もございませんわ。」

とお答えしました。

東宮様は満足そうに微笑まれて、「ありがとう。」と仰います。


清らかなお心の東宮様は、ご存知ないのです。

これまでの月日、私が弘徽殿女御さまをお誉めし尊敬したように申し上げてきたのは、女御さまを愛する東宮様にお心を許して頂くためだったのだなんてことは―

内心は嫉妬に満ちていることなど、ご存知ないのです。


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