平安物語=短編集=【完】
しかしそのたった三日後、東の対のお方は――
御難産がたたって、そのまま帰らぬ人となっておしまいになりました。
何年もの間父上に囲われて息を潜めて生きていらっしゃったのに、何と呆気ないことでしょう。
おめでたい事と悲しい事のあった実家に帰ってみると、東の対だけ喪に服した装いで、寝殿などは宴に相応しく、それでもやはり控えめに飾り付けてあるのが何ともいえず悲しいことです。
「お母様…」
母上をお訪ねしてみますと、母上はしんみりとしながら微笑まれました。
「東の対のお方が、こんなお手紙を…。」
渡されたお手紙を受け取ってみると、
『この若君のご誕生は本当に嬉しく思います。
どうやら私はもう長くは生きられそうもございませんので、あなた様にはどうか、この若君を疎ましく無礼な女の息子だとお疎みにならず、人並みにお扱い頂けましたらと存じます。
いたづらにふりける雨は
ひたすらに
残る若葉の先をのみ思ふ
あなかしこ』
と、弱々しく儚げな字が綴られていました。