平安物語=短編集=【完】



――本当に、何て控え目な方…

こんなお方だったから、母上とも上手くやってこれたのでしょう。

私は、母上のご性格が優れているのだとばかり思っておりました。

このお方こそ、どんな辛酸を舐めさせられながら生きて来られたことか…


初めて知った亡きお方の素晴らしさに、涙が押さえきれずに流れます。

母上も、しおしおと泣いていらっしゃいました。


「このお手紙が、亡きお方の最後のお言葉なのだそうです。
この後遺言に従って、若君をこちらの養子としてお育てしようと思います。
殿も、それをお望みです。」

「それがよろしゅうございましょう。
最期の最期まで、若君の将来を案じていらっしゃったのだと存じます。
そのようにして差し上げなさいませば、きっと安心なさいましょう。」

「ええ。」

ぐっと涙を堪えて、微笑み合いました。

今日は、私の弟のおめでたい日ですから――



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