平安物語=短編集=【完】
『初めてお手紙を差し上げます。
この度の父宮様の御出家、どれほどお嘆きのことかとお察し申し上げます。
また一方では、姫宮ご誕生のお喜びもひとしおかと存じます。
畏れながら、父宮様から女御様の御事を父が承りました縁からも、またこちらにも劣り腹ながらも姉にあたる宮がおります縁からも、これからは私のような者も人数にいれて頂ければ幸いに存じ上げます。
泣きてのみ過ぐすはあたらし
皆人の喜び愛でる春の盛りを
(お泣きになってばかりでお過ごしになるのは惜しいことです。
春の花の盛りのように、誰も誰もが姫宮の御誕生を喜んでおりますのに。)
あなかしこ』