平安物語=短編集=【完】
片付けで人少なになった時、右近が寄って来ました。
「これを…」
そう言って差し出されたお手紙を開いて見ると、
『偲ぶれど色に出でにけり
妹の見る紅葉の山の赤き色合ひ
(あなたへの想いを我慢していたのですが、遂に表に出てしまいました。
あなたがご覧になる紅葉の山の赤い色は、私の恋心の火なのですよ。)』
とあります。
こんなお手紙を頂くのもそうですが、右近は事情を知っているのだという事が何より恥ずかしくて、返事も書けません。
そうこうしているうちに人が来たので右近が素早く隠し、結局そのまま、別荘を去ったのでした。
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