平安物語=短編集=【完】
***



別れてきた姫君の事を考えていると、遣いの者が帰ってきて、手紙を差し出した。

ドキドキしながら開くと、

『姫様は恥ずかしがってお返事もお書きになれないご様子ですので、代筆で失礼致します。

移ろへばかれんとするか
一時の紅葉の季節は後ろめたけれ
(ほんの一時である紅葉の季節は不安なもので、時期が移れば枯れてしまうように、気持ちが変われば離れて行ってしまわれるのでしょうか。)』

とある。

姫君直筆でない事にがっかりしていると、遣いの者が

「それと、お手紙の取り次ぎをしてくれた女房から伝言を頼まれました。
訳有って今日中に屋敷を去りますとのことです。」

と言った。



< 573 / 757 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop