平安物語=短編集=【完】
ある日、父上の北の方からお手紙が届きました。
『式部卿宮様と御結婚のご予定だとか伺いました。
つきましては、こちらの屋敷に引っ越しなさいませ。
それでなくても御身分が不釣り合いなのに、そちらの粗末なお屋敷にお通い頂くのではあなた様の父宮のお顔も立ちません。
あなた様と同じくらいの年の姫もおりますし、きっと楽しいと思いますよ。』
あんまり冷たいお言葉は、いつものことです。
前は引っ越しに大反対だった侍従も、北の方の仰る事に一理あると思ったのでしょう、今度は引っ越しの方向に薦め始めました。
私も、お母様から頂いたこの屋敷への愛着はありますが、北の方のお考えは尤もだと思いました。