平安物語=短編集=【完】
院と皇太后様の御一人娘であり、帝と東宮の大切な妹君でもあり、そして太政大臣の一人息子の北の方。
誰もが羨む御身分の宮様。
それに加え、御結婚から三年が経っても浮気一つしないという殿の誠実さ。
これ程恵まれた方はそういらっしゃらないだろうと、皆が申します。
しかしお側近くお仕え致します私には、愛する旦那様に愛してもらえない宮様の御心労がひしひしと感じられてなりません。
「笑顔が素敵だと褒めてくださったの。」
一度そうおっしゃってからと言うもの、悲しみや辛さを押し隠して笑みを作るようになった宮様。
私の前でだけ、たまに堪えきれない涙を流されるお姿は、痛ましくてならないのでした。