平安物語=短編集=【完】
「本当に素晴らしい事ですわ。」
「やはり並々ならぬ前世からの御縁でいらっしゃるのね。」
誰もが微笑み、人によっては嬉し泣きまでしています。
皆の温かな視線の先は、私の腕の中の清らかな赤子です。
「おや、式部が姫君をお抱きしているのか。」
見たことのない笑顔を浮かべて、殿がおっしゃいました。
その殿をご覧になって、憔悴しきった宮様も美しい笑顔をお浮かべになりました。
貴族にとって、娘が美しく優れた女性に育ち、入内し皇位を継ぐ御子を産む事が最も望ましい事ですので、生まれてくるのは女の子が望ましいのです。
殿も例に漏れずそうお考えでしたので、宮様は姫君を産まなくてはという重圧の下におありでした。
このお可愛らしい姫君の御誕生は、久しぶりに宮様に心からの笑顔をもたらしてくれました。
内裏に汚れがつくのを避けて殿のお屋敷に下がってお産をなさった宮様は、そのまま一緒に暮らすことになりました。