花火
気を取り直して西部デパートに入った。ディスプレイや、それぞれの店舗には、早くも秋物の新作が並んでいた。隅の方に、売れ残った夏物が、セールと書かれた赤い張り紙と共に所帯なさげにぶら下がっていた。店の中を見るともなく周り、たまに気が向いたかの様に商品に手を伸ばした。だが店員の近づいてくる気配を察知すると、一つ会釈をしてすぐに店を後にした。
一人は寂しいし、張り合いもない。だが見ず知らずの人に馴れ馴れしく声をかけられ、愛そうよく振舞う気にもなれなかった。早くも疲れを感じ始め、時計の針に目をやるが、まだ駅を降りてから三十分もたっていなかった。いつもならアッと言う間に一時間二時間過ぎるショッピングが、今はつまらない社会科見学の授業の様に思えた。
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