花火
『明日は、何時にどこで待ち合わせにする?久しぶりだし、春香の行きたいとこでいいよ』
メールを送ったのは、十一時過ぎだった。仕事帰りに同僚の数人から、誕生日の前祝いということで飲みに誘われ、会社の近くの居酒屋で飲んで帰ってきたのだ。まだこの時間なら起きているだろう、そう思ったが、なかなか返事は来なかった。電車に揺られたことで酔いは一層周り、体はすでに眠りを欲していた。このまま約束をする前に眠る訳にもいかない、重い体を持ち上げ、ふらつきながらも風呂場に向かった。
少し熱めのシャワーを浴び、手際よくと言うよりは、粗雑に体を洗い、そそくさと風呂場を後にした。明日の朝もう一度ちゃんと入ればいい。乾いた喉を潤そうと冷蔵庫の扉を開けると、ミネラルウオーターと、野菜ジュース、缶ビールが一本ずつ入っていた。その中からビールの缶を取り出し、勢いよくプルタブを引いた。プッシュ、という快音と共に、一気に喉に流し込んだ。乾いた喉と、アルコールに侵食された脳に、心地よい刺激が走った。だがその行為が命とりとなった様だ。酔いはさっきよりも勢いを増し、睡魔はここぞとばかりに襲いかかってきた。結局春香からの返事を待てずに、眠りに落ちてしまった。
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