花火
隣で春香が笑っている。久しぶりに会う春香は、お台場で会った時の様に白いワンピースを着て、顔には薄く化粧が塗られていた。会えない時間に出来てしまった見えない溝も、こうして一緒にいればアッという間に埋まっていく。久々に満ち溢れた気分に浸っていると、頭の上に何か小さく、冷たい物が落ちてきた。見上げると、大きな雨粒が降ってきた。春香の手を取り、走って屋根のある場所を探した。そしてようやく見つけた民家の軒下を拝借した。雨は止む気配を一向に見せず、二人はただ、無限に落ちてゆく雨粒を見つめていた。すると急に背後から人の声がした。そこには莉那が立っていて、そして何かを叫んでいた。