花火
妙に人懐こいタクシードライバーのお陰で、予想していたよりもあっさりと吉田家をみつけることが出来た。あっけな過ぎて、心の準備が追い付いてなかった。だがねずみ男が吉田家と指指したのは、木造平屋の、昔ながらの簡素な住まい、そう言えば聞こえはいいが、正直言えば、古く、どことなく陰気な雰囲気が漂う家だった。はたしてこの家が春香の生まれた実家なのだろうか?早くも疑念を抱き始めていた。ポケットから煙草を一本取り出すと、火をつけ大きく一口吸い込んだ。迷っていても始まらない、フィルター近くまで吸ったタバコを地面に落とし踏みつぶすと、玄関のチャイムを押した。
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