花火
きっと返事は来ないだろう。昨日の彼女の後姿が脳裏に浮かんだ。するとその核心は一層強まった。だが脳内では、それとは正反対の事態を想定していた。もし返事が返ってきたらどうする?残りの日々を一緒に過ごしたいと言われてどうする?何が出来る?何をしてやれる?彼女の弱まりいく姿を想像した。昨日見たそれより、更に痩せ衰えた姿を。苦しみながら必死に手を握り締める、その爪が食い込む、まだ生きたいと必死になって訴える、抗うことも出来ずに、苦しみの中息を引き取る。その過程で、僕は何も出来なかった。ただ指を加え、泣き叫ぶことしか出来なかった。そしてそれが答えなのだろう。そう思うと、無性に寂しくなった。情けなくなった。愛する人一人、愛し抜く力がまだないのだ。普段は顔を隠している心の奥底の弱さと、初めて向い合った気がした。