花火
時計はもうすぐ、四時を指そうとしていた。遠くから止まっては鳴り、止まっては鳴りを繰り替えすエンジン音が聞こえてきた。世界は何事もなかったかの様に、朝を迎える準備を始めていた。
『仕事でしょ?今日はもう寝て。おやすみ』
答えになっていないじゃないか、そう言いたかったが、心の中で小さく呟くだけにした。
おやすみとどちらかが言ったら、その日のメールのやり取りは終わり。いつの間にか出来た暗黙のルールだった。
『今日は休みだから心配しないで。おやすみ』
ベッドに戻り、遠くから響くエンジン音に耳を傾けた。瞬きをしたつもりが、そのまま深い眠りに吸いこまれていった。
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