花火
『強がってるんじゃないの。恐いの。たっくんに優しくされればされる程に、思われれば思われる程に、生きたいという思いが強くなることが恐いの。分かったら、もう止めて』
自分はもう全てを諦めたというのか?暫く指が動かなかった。頭の中には心臓の音だけが響いていた。こんなにも力強く脈打っているのに、遠くではその脈動への終止符を告げられた人がいる。自分がもしその立場だったら…。恐かった。大切な人の顔が次々と浮かび、そして遠ざかって行った。一人暗闇に取り残され、死にたくないと、胸や喉を押さえて倒れこむ、全身には今までに感じたことのない様な激痛が走る、その痛みに耐えられず気を失っていく、二度と光の差し込まない、闇の中で一人。
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