花火
「待った?」
同じ物をもう一つ、そう告げると、横の席に腰を降ろした。
「そうでもないよ」
時計を見ると八時五分前だった。
「拓哉少し痩せたんじゃない?」
左横から顔を覗き込む様に聞いてきた。確かに、最近ろくに食事も取っていなかった。
「ちょっと今週は色々あってさ」
曖昧に誤魔化した。どこで本題に入ればいいのだろう。店員がもう一つのグラスを運んできた。
「何か話すことがあるんでしょ?」
グラスを口に運びながら、おもむろに切り出したのは貴美だった。
「あぁっ」
小さな溜息と共に答えた。貴美は敢えてそれ以上切り出そうとしなかった。諦めて口を開いた。
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