花火
遠くを見つめながら聞いてきた。その横顔をそっと覗くと、目の淵に輝く物が浮かんでいた。何か言わなくてはと思うが、言葉がうまく出てこなかった。黙ってグラスを握る両手を見つめた。
「あ~ぁっ、完敗ね。好きなんでしょ?そうじゃなかったら、そこまで無謀なこと出来ないわよ。何を悩んでいるの?ここまで着たら、最後までその無謀差を貫き通しなさいよ。拓哉も春香さんも、お互いのことを考えているようで、ただ逃げているだけじゃない。これ以上傷つきたくないって、言っているだけじゃない。何で私がこんなこと言うか分かる?恋敵の肩を持つか分かる?本当ならね、言いたいわよ。そんな女のことは忘れて、私と一緒に居ればいい、って、私の方が拓哉を幸せに出来るって。一時の気の迷いで、悲劇のヒロインの片棒を担ぐ必要ないって」
最初はおどけていたつもりだろう、だがその一言一言は、徐々に熱を帯びていった。
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