花火
で冷蔵庫を持ち上げ、軽々と階段を下りていった。化物だ。
彼等の活躍のお陰で、三十分もたたない内に部屋の中は空っぽになった。こうしてなにもない部屋を見ると、いつもの二倍は広く見えた。だが感傷に浸る間も無く、体操のお兄さんは新住所と、待ち合わせの時間を確かめ、早速階段を駆け下りて行った。脳みそまで筋肉になってしまったのか?いや、次の仕事も詰まっているのだろう。棒自身、感傷に浸っている場合ではない、そう思い、五年弱の思い出が詰まった部屋に、別れを告げた。
お世話になった不動産屋に鍵を返し、ホームにやってきた電車に乗り、津田沼駅に向かった。この電車に乗ることも、当分なくなるのだな。もしかしたら、一生ないかもしれない。目に映る全ての物が、感傷的に映った。長野から東京に出てくる時も、確かこんな感じだったな、そんなことを思い出していた。
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