花火
「春香さんのため、それは違います。僕は自分が春香さんの傍にいたいから、今の道を選んだんです。だから感謝とかそういうのは、ちょっと違うかなって、思います」
横目で車を運転するお父さんの様子を窺うと、満足そうに笑みを浮かべていた。
「なるほど、春香もなかなか見る目が合った様だな」
それ以来会話という会話もないままに、十五分程の駅までの道のりは終わった。
「次はいつ来れるんだね?よかったら明日も来ればいい。今日は大したお持て成しも出来なかったからな」
少し戸惑っている様子を見て、続けた。
「遠慮することはない。あの子もきっとその方が喜ぶ。駅に着く時間を伝えてくれれば、私が駅まで迎えにくる」
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